PMS:月経前症候群とは?

イライラ、うつ、情緒不安定、倦怠感、眠気 …

月経前にこんな症状を感じたことはないですか?

その他、肌荒れ、集中力の低下、食欲の更新、下腹部痛、腰痛、むくみなどの症状がみられることもあります。かと思うと、月経が始まるとけろりとよくなってしまう。

なんとなくいつもことだからこんなもんだと思って放置してしまっている人もいるかもしれません。一方で仕事や学校に影響が出てしまうほど強い症状の場合は大きななやみとなってしまっていることでしょう。イライラが強く周囲の人に対して攻撃的な言動をとってしまい、その後の人間関係に影響が及んでしまったりと深刻な状況に陥ってしまうことも珍しくありません。

またPMSとしての自覚はなくても、普段からイライラしやすいと感じている人は、それが月経前に特に強くなっていないか、毎日の体調についてよく観察してみましょう。PMSの治療はその症状に気が付くところから始まります。

PMSの原因

様々な要因がからみあって症状が出ることが多いのですが、代表的な主な原因には以下のようなものがあります。まずは原因をさぐりその後の治療につないで行きます。

  • 鉄分不足
  • ビタミン不足
  • ホルモンバランス
  • 生活習慣(ストレス、睡眠不足、喫煙、アルコール等)

PMSの治療

― 貧血・鉄分不足の治療

PMS症状のあまり知られていない原因の一つに鉄分不足があります。

貧血の指標であるヘモグロビンの値は正常値のため、検診などでは貧血を指摘されることはなくても、フェリチン(貯蔵鉄:体の中に貯蔵されている鉄分量)が不足すると、PMS症状がひどくなることがあります。女性は毎月、月経で血液を失います。失った血液をまた新しく作り足す必要があるのですが、その時の材料になるのが鉄です。お食事を通して摂取される鉄分と材料として使われる鉄分の収支決算が赤字になると、徐々に鉄の貯金残高(フェリチン:貯蔵鉄)が減ってきます。

このフェリチンの値は通常の健康診断では検査されることがほとんどないため、だいたいが見過ごされてしまいます。ヘモグロビンの値は正常で、健康診断では貧血を指摘されなくてもフェリチンの数値が低くなってしまっている隠れ貧血の女性は意外にも多く、これはPMSや様々な不定愁訴の原因となり得ます。

当院ではPMS症状で来院された患者様には必ず貧血検査、フェリチンの検査を行っております。だいたい半数以上の方に低フェリチンを認め、その場合鉄剤を投与し鉄の貯金を増やすことでほとんどの方は症状が改善します。

― ビタミン

フェリチンは十分ある、もしくは低フェリチンで鉄剤を投与しても症状の改善がない、という方は、ビタミン(特にビタミンB群)不足の可能性が高いです。ビタミンは一日の所要量として摂取の目安が決められていますが、そもそも1日のビタミンの必要量は、生活習慣や生活環境等で変化します。普段からストレスが多く、睡眠不足で心も体も酷使している人は、ビタミンの消費量が多く不足しがちになります。それ以外にもアルコール摂取、喫煙などでもビタミンの消費は増えます。加えて食事のバランスが悪くビタミンの摂取が不足している人はなおさら要注意となります。

まずはビタミンを消費するような食事や生活習慣を改善し、ビタミンをしっかりと補給してあげることでPMSの症状は徐々に落ち着いてきます。

― 漢方

鉄分やビタミンに加えて、漢方薬を併用することもあります。

漢方薬は本来、正しく一人一人に適したものを選んであげると、即効性をもって効果を発揮してくれますので、月経前の症状時に頓服として服用するのがよいと思います。効果があるということは、もちろん副作用もあります。よく漢方は体に優しく、副作用がないというイメージを持たれる方も多いと思いますが、漢方は歴とした薬です。間違った漢方薬を服用することは効果が出ないばかりでなく肝臓の負担にもなりますので、服用して効果がないものを漫然と飲み続けることだけは避けましょう。

― ピル

月経前はとくにホルモンの分泌が大きく変化する時期で、体も心も影響を受けやすい時期です。そのため治療にはホルモン的なアプローチとしてピルなどが処方されることが多いのですが、ピル自体にも血栓症等の副作用があり、服用には十分な注意が必要です。ただし症状改善効果は高くまた即効性がありますので、自分自身、または周囲の人を物理的に傷つけてしまう恐れがあるなど、緊急性が高い場合は投与をすぐに開始することもあります。中には自殺願望が出てくる方もいますので、そう言った精神症状が強く、深刻な場合は並行して心療内科の治療も必要となります。

― その他のホルモン剤

バランスを整えるだけのマイルドなホルモン療法をすることもあります。過剰となりがちなエストロゲン(女性ホルモン)に対してプロゲステロン(黄体ホルモン)が不足してしまうと、月経痛やPMS症状などの症状につながってしまいます。プロゲステロンを少量、薬で服用していくことで、バランスが補正され症状の改善につながります。あくまでもバランスを整えるためだけですので、服用する量も少量で、排卵を止めることなく、自分自身の周期が保たれます。また血栓症等の副作用のリスクもピルほど高くはありません。とくに自然のホルモンに構造や性質が近いホルモン剤を選択することで、さらに安全に治療をすすめていくことができます。

― ハーブ

PMS症状に使用される代表的なハーブはチェストツリーです。

チェストツリーの成分の中にプロゲステロン(黄体ホルモン)に似た構造の成分があるため前述したマイルドなホルモン療法と同様の効果が期待できます。ただし効果があってもこのホルモン用の物質が副作用の原因となることもあります。服用する量が多いと排卵がとまり不正出血や月経不順の原因となることもあります。チェストツリーを含有しているサプリメントは様々市販されていますが、どれくらい配合されているのか量がとても大切です。チェストツリーのエキスとして1日40mgを上回る量の場合は要注意です。むくみや倦怠感が出現した場合は中止しましょう。不正出血や月経不順の症状があった場合は必ず婦人科を受診し相談してください。また感受性は人それぞれですので、少量でも心配な症状があった場合は中止しましょう。それらの症状を好転反応と称している販売店もありますが、そんなことはありえません。

チェストツリーはとてもよいハーブですが、以上のことを十分注意し使用していただければと思います。チェストツリーに限らず、その成分になんらかの薬効がみられるようなハーブは漢方薬と同様、副作用も考えられます。飲んでみて何か不調や違和感を感じたたりする場合は体に合っていない可能性があるので、中止するようにしましょう。

― 生活習慣

基本的な生活習慣はとても大切です。女性の体は1か月ほどの月経周期の影響を大きく受けます。体調のよい時期、悪い時期が周期の中でやってくるため、その周期を知り上手に付き合っていくことが大切です。普段の睡眠不足やストレス、体の疲れなどは、月経前に1カ月分まとめて請求書がやって来ると思いましょう。またできるなら月経前の体調を崩しやすい時期にはあまり忙しくスケジュールを詰め込めこみすぎないようにするなど、自分の体への配慮も大切です。

まとめ

PMSの原因は一つではありません。そして治療法も一つではありません。短絡的にピルをすぐに始めてしまう前に、まずは生活の中や病院での検査でその原因を探って行きましょう。原因を探ってそれに対する根本的な治療をしっかりしていくことが基本となります。症状が強い場合は一人で悩まずに、ぜひご相談にいらしてみてください。
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